深夜の2時を越えた夜
独り、店の中でする仕事は嫌いじゃない。
それが針の真ん中を越えた時間であれば尚の事。
1日で2日分の仕事をする。
時間としても内容としても。
気が触れているのかもしれないが、だとすれば2日で最低3日分の仕事が出来るありがたさを噛みしめることが出来る。
東京は夜も明るい。
もう10年を越えたこの街での生活。
それでも、肌にも心にも僕には合わないしそのどこの街も僕を受け入れないし僕は街を受け入れない。
走る車、タクシーに手をあげる若い連中。
あくびをする猫。
ラジオのパーソナリティはコロナの重症化率について語ってる。
オリンピックが始まるらしい。
どこか遠くの国で。
遠い太鼓が鳴り響く。
そう、もう三日月も息を殺して寝たフリをしている。
世界中の誰もがそれを信じても僕はそれを信じない。
どこかに読みかけの本が溜まってる。
水路の水が留まっている。
どこかで水の流れが悪いのだろう。
三日月はどこへ行った。
遥か向こう?
目が霞む。
水彩画。
錆止め。
三日月を探す。
あの建物の裏側にきっと隠れてる。
僕は知っている。
嘘つきの真夜中で。